はいからいうたらはいからやねん

上岡龍太郎がやってる昔関西ローカル今全国区の「探偵ナイトスクープ」で何年か前「あほばか分布図」という特集をやったことがある。これは後になんとかっていうテレビ番組に与えられる賞をとったりしてこの番組を世に知らしめるきっかけにもなった特集だが、要はこういう話である。
「関西では軽い気持ちで相手をからかうとき"あほ"と言うが、東京では"あほ"はきつい侮蔑用語で、同じような用途にはどちらかというと"ばか"を使う。ということは名古屋あたりに"あほ"と"ばか"の境界線があるはずだ。」
もともと30分番組だし、最初は単に岐阜かどっかに境界があるらしいということをつきとめて番組は終わったんだけど、それがおもろいということになって何度か同様のテーマで調査を続け、最終的には全国の「"あほ"と同じ用途の言葉」を調べ上げそれぞれの境界線を見つけ出したんだよね、"たわけ"とかさ。

別に私はアカデミックな話をしようとしてるわけでは全然なくて(笑)、いろんなとこ住んでみるとそれぞれものすごく特徴があっておもろいんだけど、昔からそこに住んでる人はそれが至極当たり前のことで疑問挟む余地すらなかったりして、それがまたよそ者にはきわめておもしろいわけで、そんな話を思いつくままに身近なところで書いてみようかなと思ったわけなのだな。

今日「天かすの入ったうどん」は何うどんだ?って話で盛り上がってて(笑)、ま、当然東京の連中は、というか関西以外って言った方がいいのかな、「たぬきうどん」だって言うし、大阪の人間は「はいからうどん」だと譲らない。「はいから」っていう呼び名は意外と知られてないみたいで、最初聞いた人間は冗談かと思うらしい。でも「なか卯」っていうれっきとしたモスグループの牛丼プラスうどん屋のメニューにも「はいから」は存在する。
学生の頃は京都に住んでたのだが、飲んで朝帰りの時とか、徹マン明けになか卯で朝飯を食うことも多く、当時は座った瞬間に、
「"並"と"はいから"と"卵"」
ってメニューも見ずに言ったもんだ(笑)。
確か700円くらいだったか。

そう言えば就職が決まって京都を去る直前の数日間は住むところがなくてホステスのお姉ちゃんのアパートに転がり込んでて、信じられないかもしれないがそのお姉ちゃんとはキスしかしてないのだが(笑)、最後の晩に3時頃酔っぱらったお姉ちゃんが仕事から帰ってきて、
「おなかすいたやろ?うどん食べ。」
ってなか卯のカレーうどんをおみやげに持ってきてくれたのを思い出した。
のびまくってたけど涙が出るくらいうれしかったな。
その足で会社の新入社員研修所に直行した私も今思うと強者だ(笑)。

私は個人的にうどんは関西の方が断然うまいと思うから、メニューの呼び名も関西式を使ってる。それに実は京都に住んでたときに祇園のそば屋でバイトしてたので、普通の関西人より詳しかったりする。
というわけで、関西式うどんメニュー講座(笑)。
しかもほぼ安い順(笑)。

てんかすの入ってるやつ 「はいから」
卵が入ってるやつ 「月見」
卵が溶き卵のやつ 「卵とじ」
とろろこんぶが入ってるやつ 「おぼろ」
山芋がかかってるやつ 「山かけ」
片栗でとろみがついてるやつ 「あんかけ」
甘いおあげがのってるやつ 「きつね」
甘くないおあげが刻んでのってるやつ 「きざみ」
タケノコとかかまぼことか入ってるやつ 「しっぽく」
卵とじのあんかけ 「けいらん」
鶏肉が入ってるやつ 「鴨なんばん」
きざみのあんかけ 「たぬき」(京都のみ)
(大阪ではきつね"そば"を「たぬき」という。つまり「きつね」は"うどんしかない"!)
鴨なんばんの卵とじ 「親子なんばん」
釜にはいってお湯に浸かってるやつ 「釜あげ」
牛肉が入ってるやつ 「肉」
牛肉の卵とじ 「他人」
(「他人」を"豚と鶏"と勘違いしてる人も多いが関西で肉と言えば牛である)
カレー粉入りあんかけ 「カレー」
(決してカレールーをどばどば入れたりしない!!)
天ぷらがのってるやつ 「天ぷら」

ちなみにネギくらいしか入ってないうどんはメニュー上は「うどん」だけど、一般に「素(す)うどん」って言いますね。

ところで、社会人になっていきなり山形に飛ばされるわけだけど、さっきもちょっと触れた「なか卯」が実は山形にもあって、京都から引越ししたばかりの私は喜び勇んで食いに行った。当時は懐かしい「関西のうどん」を提供してくれていて、つきあってた彼女に、
「これが関西のうどんや。」
といんちき関西人のくせに(笑)自慢してたもんだ。
しかし山形では「コシのまったくないぼそぼそのうどん」と「醤油で真っ黒なつゆ」が好まれるようで、懐かしい京都のなか卯の味は次第に影を潜め、1年も経った頃には東北のあまったるいクソまずいうどんに変わってしまったのだ。でも山形の人にはそれがおいしいんだよなあ・・・。

同様の驚きは名古屋人の赤だし信仰に対してもあるんだけど、これは別の機会に書くしかねえよなあ、結構長くなったし(笑)。
あ、そうそう「はいから」っていうメニュー自体は山形でも生きてたね、少なくとも私がいたころは。ここ数年山形のなか卯には行ってないけど、今「たぬき」になってたら悲しいね。
天かすは「はいから」じゃあ!「たぬき」とちゃう!!!
「きつね」が先にあったから「たぬき」があるのだ。
「少なくとも"おあげ"との関連性は残っているはず」と考えるのが妥当でしょ。
なんで天かすは「はいから」なんだ?って言われるとちと困るけどね(笑)。

(1999.02.16)

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